preparation time

 ヘッドボードのライトのみが灯るドクターの寝室。暖色のそれがぼんやりと照らす室内でぐち、ぐちっと淫らな水音が響いている。夜毎、ベッドの上で行われる「作業」の音だ。
「んっ……ぅ、は……」
 無防備に投げ出された生白い脚。シーツを波立たせているその脚を辿っていくと、高くあげられた双丘の間には子供の腕と見紛う太さの性具が挿さっていた。黒一色のそれが白い肌の間から見え隠れしている。その淫靡なコントラストを楽しむように、節ばった大きな男の手が快感に揺れるそこに触れた。呼吸する度に中を埋めるものの存在を感じるのか、苦しげな息と共に腰を震わせている。
「だいぶ解れたようだな、ドクター。これを奥まで飲み込めるとは」
 偉いぞ、とビロードのような響きを伴う低い声が落とされた。まるで声で全身を撫であげられたかのように、ドクターの体がビクビクと痙攣する。
「ぁ……私からは、見え、ないから……っ」
「だが胎の奥に届いているのは感じるだろう?」
「ぅん、っ、あっ、かんじる、ぅ……ふっ」
 言葉を発する度に中が収縮するのだろう。一語一語絞り出しながら、びくん、びくんと揺れる腰を大きな手が優しく、優しく撫でる。
 規格外の恋人と繋がるために今までドクターは少しずつ努力してきた。ヘラグの指から始まり、後ろで快感を拾うことになれてきたら次はディルドでの慣らし。段階ごとにサイズを変えて着実に、ただの排泄器官と内臓が立派な性器になるように時間をかけて拡げられた。
 その結果、クランタの性器を模したそれを根元まで埋め込むことにとうとう成功したのだ。
 ディルドを受け入れている間、ドクターはヘラグの性器を咥内で愛すことにしている。いずれ受け入れることになる恋人の陰茎を口で愛しながら拡張行為に身を委ねる時間はとても幸せで、ドクターはいつもうっとりとしながら凶悪な肉槍を頬張るのだ。
 早く、これに愛して欲しい、早くこれに自分の胎を貫いて欲しい、そう乞い願いながら一心不乱に奉仕するその姿はとてもいじらしく、ヘラグの目を楽しませた。
 今日もいつもと同じようにしようと恋人の下腹部に顔を寄せる。だが、下半身を襲うあまりの圧迫感に、チロチロと舌を添えることしか出来なかった。どくんどくん、と脈打つそれに舌が震える。唇で形をなぞりながら、熱と硬さを受け止めるがいつもと違う雰囲気を感じて、ん…と吐息を漏らした。口に入れずとも気付いた変化にドクターが竿に頬を擦り寄せながらヘラグを仰ぎ見る。
「……ふ、いつも、より元気……?」
 はは、と柔らかい笑い声が上からふってきてドクターは擽ったそうに目を細めた。
「すまない、とうとうこのサイズを受け入れた貴殿を見て、年甲斐もなく興奮してしまったようだ」
 返事代わりにちゅ、と先端にキスをするドクターにヘラグが優しい手つきで頭を撫でた。
「も、う、あなたのを、いれられる?」
 ふう、ふうと息をつきながら期待の眼差しを向けるがヘラグはドクターの薄い腹に手をやった。
「まだ挿れるのがやっとだろう。もう少しこれが馴染むまで……」
「ん……ぅ、やだ、もう挿れたい……」
「貴殿のためだ。せめて、それをいれながら私をいつものように愛せるくらいになるまでは」
 困ったように微笑む年上の恋人にドクターは、物分りのよさを見せるため小さく頷いた。胸の下まで到達する圧迫感に涙を滲ませながら、目の前で反り立つ熱に再び舌を這わせる。ヘラグの言う通り、圧迫感で死にそうで余裕はまるでない。彼の言うことに間違いはないから、この判断は正しいのだろう。でも、早くひとつになりたくて仕方なかった。
 恋人の気が変わらないかと腰を揺らして誘うが、ヘラグとドクターでは閨での経験値が違いすぎる。
優しい笑い声が響く部屋で、ドクターは異物でいっぱいのハズの自分の胎がもの足りなさに轟くのを確かに感じたのだった。



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